その冬、もーもーらんどで、何十年ぶりに幼なじみたちと顔を合わせ、BBQをしました。
会った瞬間から笑いが広がり、まるで昨日まで会っていたかのように話が弾みました。思わず私が「まるで浦島太郎みたいだね」と言うと、みんなで大笑い。その日から、私たちは「浦島太郎ず」と呼ぶようになりました。
それから四か月後の春、また同じメンバーで花見をしました。幹事三人で手分けして現地を下見し、お弁当を買って味見までして、おはぎまで用意した、少し気合いの入ったお花見でした。満開の桜の下でお弁当を広げ、あちこちから笑い声が聞こえていました。それから一年が過ぎ、また春がめぐってきました。

そのころ父は三月に入り、誤嚥性肺炎を三度も起こしていました。病いの中にある父の姿を見ると、とても桜を楽しむ気持ちにはなれませんでした。近くの公園からは、お花見を楽しむ人たちの声が聞こえてきます。
同じ春でも、まるで別の世界のように感じていました。
父のことを小さな頃から知っている幹事の二人が、父を心配して「今年はやめよう」と声をかけてくれて、昨年の花見は見送ることにしました。

そんな中、孫たちがそれぞれ父に会いに来てくれました。各地から、次々とです。父のそばに立ち、顔をのぞき込みながら「おじいちゃん、ありがとうございました」と挨拶します。孫たちの名前を言うと、父は分かるのです。
少し間をおいて、「ありがとう」と返事をします。父の目には、涙がにじんでいました。その中の一人が、父のために持ってきた笛を取り出しました。そして讃美歌「今日まで守られ来たりし我が身」を静かに吹き始めました。
部屋の中に、静かな時間が流れていました。父は目を閉じて聞いていました。演奏が終わり、母と私が拍手すると、父はゆっくり目を開き、「いいじゃないの」と優しく一言。その笑顔は、とても穏やかなものでした。
あれから一年。
今年も桜の季節がめぐってきました。二年ぶりに、花見もできるかもしれません。心に、そっと蕾がふくらんでいます。