心をあたためる焚き火のそばに、やさしく漂う珈琲の香り

寒い季節になると、湯気の向こうにぬくもりを探したくなります。火のそばに人が集まるように、優しさのそばには、心が静かに寄り添う。そんな優しさを、今日もすぐそばで見せてくれる人がいます。それは、私の弟です。弟には、心がけている言葉があります。それは「優しく、丁寧に。」

ベッドで寝ている父に接する時、弟はいつも父の目線にまでおりてきて、笑顔で語りかけます。「お父さん、来ましたよ。お元気ですか?」父はゆっくりと目を開けて、「ああ、来てくれたの?」と嬉しそうに、会話が静かに始まります。

母はその様子を、嬉しそうに聞いています。「お母さん、おかわりありませんか?」その声かけに、母は安心したように、自分のペースでゆっくりと話し出します。

弟はその言葉にあいずちを打ちながら、優しく、丁寧に返事をします。その穏やかなやりとりを見ていると、部屋の空気までやわらかくなるような気がします。優しさが心もからだをあたためる焚き火なら、わたしは、そのそばでポコポコと立ち上る珈琲の香りのようでありたい…なんて思います。

見えるぬくもりも、静かに漂うぬくもりもあります。どちらも、暮らしをあたためてくれます。人の数だけ、その人の優しさがあります。そんなぬくもりを、いまもどこかで思い出します。それは、たぶん、とても美しいことなんだと思います。

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