「イーチ、イーチ」―声を合わせて、家に帰る日

12月に入り、父は4カ月ぶりにレスパイト入院を、母はショートステイを利用しました。今回もまた、両親はわたしにリフレッシュの時間をつくってくれました。

※レスパイト入院とは
在宅で介護を受けている方が、介護する家族の休息や心身の回復のために、一時的に入院する仕組みです。

入院の日も、退院の日も、わたしたちは決してひとりではありませんでした。助けてくださったのは、介護タクシーさんと訪問介護士のSさん。保険外の対応になりますが、それでも「もちろんですよ」と、喜んで、心を込めて関わってくださいました。

父を車椅子に乗せたまま、この団地の階段を上り下りするために、介護タクシーさんと、訪問介護士さんお二人が息を合わせます。その中心にあったのは、介護タクシーさんの、落ち着いた掛け声でした。

「イーチ、イーチ、イーチ、イーチ」

一段ずつ、確かめるように。焦らせることなく、父の身体と気持ちを守るリズム。

訪問介護士のSさんは、ちょうど父の孫くらいの年齢の、誠実であたたかな青年です。父が歩けなくなった頃、Sさんは父のそばまで下りてきて、目を合わせ、こう言ってくださいました。

「お父さん、僕が生きている限り、お父さんを抱えていきますからね」

その言葉に、父も、母も、そしてわたしも、胸の奥が熱くなりました。

父は、少し会わない時間が続くと、人の顔を忘れてしまうことがあります。けれど今回、4カ月ぶりにSさんと再会したとき、父は違いました。

Sさんが、やさしく声をかけます。

「お父さん、お久しぶりです。お元気でしたか?」

父はSさんの顔を見た瞬間、はっとしたように表情が変わり、特別な笑顔を見せました。それはまるで、信頼しきった、頼もしい孫に再会したときのような喜びでした。

「イーチ、イーチ」

無事に階段を上りきったその瞬間、張りつめていた緊張が、すっとほどけました。

今日も、こうして人の手と声に支えられて、家に帰ることができました。心を込めて関わってくださったお二人に、感謝の気持ちでいっぱいです。

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この記事を書いた人

90代の両親の介護をしながら、
日々のことを綴っています。

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