父の食卓に寄り添う- 言語聴覚士の先生と一匙のぬくもり

週に一度、祈りの園生(そのう)(両親の部屋の名前)に、言語聴覚士のR先生が来てくださいます。言語聴覚士とは、ことばや嚥下(飲み込みのこと)のリハビリをしてくださる先生のこと。明るくやさしい二児のママで、父の食卓にそっと寄り添ってくださる、心強い存在です。

思い返せば今年の3月、父が誤嚥性肺炎を繰り返していた頃。そのときは医師の特別な指示で、R先生と看護師さんが交代で訪問してくださいました。父の体力が落ちて食べることさえ怖く感じていた時期に、そばで嚥下を確認しながら食べさせてくださった日々は、どれほど心強かったかわかりません。

聴診器で飲み込みを確かめつつ、一匙ごとに飲み込みやすい工夫を示してくださり、何も知らなかった私にとって本当に大きな支えでした。

飲み込む瞬間には、聴診器を喉にあて、ゴクリという音や呼吸の様子を確かめながら。

「このタイミングなら飲み込みやすいですね」
「このくらいの大きさなら大丈夫」
「水分には少しトロミを」

やわらかな声で伝えられるアドバイスに、安心が広がっていきます。

食後には父の好きないちじくを潰して。口に入れた瞬間、目を輝かせて、嬉しそうに「美味しい!」と声を弾ませました。その表情は、食べることがまた喜びになっていることを教えてくれます。夏の間落ちていた食欲も、少しずつ戻ってきたように感じます。

R先生は、父の嚥下の様子を在宅療養支援の先生(在宅で父を診てくださる主治医)にも連絡してくださり、情報を丁寧に共有してくださいました。家族だけでは判断できないことを、こうして一緒に見守っていただけることは本当にありがたいことです。

父が「美味しい」と言いながら食べる一口一口に寄り添うリハビリ。その小さな積み重ねが、日々の安心につながり、食卓をやさしく照らしてくれます。

今日もまた、祈りの園生に流れる食事のひとときに、ぬくもりを感じました。

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