姉は朝早く新幹線に乗って、神戸から来てくれました。前日にお土産も準備してくれて、母の好きな高砂屋のきんつば、父にはやさしい甘さの神戸プリン。弟家族には姪が好きなたこせんべいも詰めて。そういうところに、姉らしさを感じます。
忙しい姉が時間を作って来てくれたことは、簡単なことではありません。義兄の支えがあってこそ、この3泊4日が叶いました。姉だけでなく、義兄にも「ありがとうございます」と伝えたいです。
姉からLINEで「今、バス六本松です」と届きました。迎える準備を終えて、そろそろかな?と時間を逆算して、私はバス停へ。送りに行くのは当たり前でも、迎えに行くのは初めてでした。それくらい、この日が待ち遠しかったのだと思います。そして不思議なように、私が着いたちょうどその時、バスも到着しました。
姉が家に入った瞬間、空気がふっとやわらぎました。姉は父の顔をのぞき込み、「お父さん、来ましたよ~」と、やさしく声をかけました。父は少し間をおいて、「……嬉しい〜」。その声に、涙が混じっていました。その涙を見た瞬間、胸の奥がぎゅっとなりました。

介護をしていると、景色がいつも同じになります。ベッドの横の窓を、1時間近く見つめながら食事介助をしていると、ふっと思うのです。「あそこに行きたいな〜…」って。ぶたまん屋さんのぶたまん。サザエのきな粉おはぎ。そして、ロイヤルホストの海老と帆立のシーフードドリア。小さな願いが、静かに積もっていきます。
3日目の夕方は訪問歯科の往診。その時間、家を空けることができなかったので、お嫁さんが代わりに留守番に来てくれました。その日は、少しだけ場所を変えて、ゆっくり話そうということになりました。はじめは近くのお店へ行く雰囲気だったのですが、車の中で、ドキドキしながら「ロイヤルホストがいいな」と言ってみました。飲み物の話というより、落ち着いて座って、ゆっくり話せる場所がよかったのだと思います。
着いてから弟が、「海老と帆立のシーフードドリア、食べたいって言ってたよね」と言ってくれて、姉も「食べなさい」と笑いました。私は海老と帆立のシーフードドリア。姉と弟は珈琲。珈琲の香りに包まれて、湯気の向こうで、作戦会議が始まりました。
これからのこと、協力体制、日常をどう回すか。介護は誰か一人の根性では続かない。役割を分けて、声をかけ合って、息の長いチームにしていく。4日目の朝は主治医の先生の往診。姉は初めて先生に会い、ご挨拶できました。
姉が来てくれた3泊4日、食事は全期間、姉の手で。母の味を思い出しながら、母が昔作っていた味を、そっと再現するように。台所に立つ姉の背中を見ていると、それだけで心が落ち着きました。作ってもらって食べる……なんて贅沢なことでしょう。

父のことも母のことも、私が抱えていた心配は、訪問看護や言語聴覚士を通して、先生にも届いていました。そして、丁寧に説明してくださり、私はほっとしました。姉が同席し、同じ話を共有できたことが、心強かったです。
姉は帰っていきました。冬季キャンプは解散。また日常というコースに戻ります。同じ家、同じ時間。でも何かが少し違う。情報を共有できたこと、体制が整ったこと、姉の手料理に心も身体も整えられたこと。そして「ひとりじゃない」と身体が覚えたこと。
私はまた日常を走ります。でも背中には、ワンチームの足音がある。2026、ワンチーム介護。本格始動。