秋分の日と、おはぎの思い出

明日は秋分の日。昼と夜の長さが同じになるこの節目に、おはぎのことが心に浮かびます。

東北に6年間暮らしていたころ、初めて出会ったのはウグイス色の大豆をまぶしたおはぎです。鮮やかな緑色に驚きながら口にすると、やさしい香ばしさと甘さが広がり、「こんなおはぎに出会えるなんて」と感動したことを今でも覚えています。

寒さの厳しい東北ですが、そこに暮らす人々は誠実で温かく、ほんの少し言葉を交わすだけで心が和らぎました。そこで出会ったHさんのお人柄も、今もやさしく心に残っています。 明るく朗らかで、まるでみんなのお母さんのような存在でした。

Hさんのおはぎは絶品でした。上品な甘さのゆるめの粒あん、柔らかめのもち米、そして手のひらにずっしりとのるような形。 ひと口食べると、まさに至福のひとときでした。 その味わいは今も忘れられません。もしお店を開いていたら、きっと行列ができたでしょう。私なら朝早くからでも並びたいと思うほどです。

私は、普段は中にあんこを入れて外にきな粉をまぶしたおはぎが好きです。二つの味を同時に楽しめるお得感があり、食べるたびにうれしい気持ちになります。けれど、Hさんのおはぎは、その好みを超えて心に残り続けています。

思い返すのは味そのものだけではなく、人のぬくもりや土地の恵み、そして共に過ごした季節の記憶。
秋分の日を前に、目をつぶれば懐かしい「ふるさと」の歌が浮かび、心に小さな灯りがともります。

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