夏の終わりに迎える恵みー父の91歳の誕生日
週間天気予報では、まだまだ34〜35℃の暑さが続くと伝えられています。けれど暦の上では立秋を過ぎ、朝に響く蝉の声も、どこか控えめになってきたように思えます。夏の盛りの中にも、静かに季節が移ろっていく気配があります。そんな夏の終わりに、わが家には大切な節目が訪れようとしています。父が、91歳の誕生日を迎えるのです。

この春、誤嚥性肺炎を繰り返した父の姿を前に、誕生日を迎えるのは難しいのではと思ったこともありました。それだけに、今年この日を迎えられることが、本当にうれしく、感謝な気持ちでいっぱいです。
誕生日の日は、夕方から弟家族が訪ねてきます。普段はベッドで食事をとる父も、この日は手を借りながら車椅子に移して、食卓を囲む予定です。先日、遠方の姉が帰省し、父と静かな時間を過ごしました。当日はLINEのカメラ通話を通して、一緒に参加してくれます。
父の誕生日といえば、思い出す場面があります。小学生の頃、きょうだいそれぞれが父に誕生日を祝う手紙を書き、父に読んで聞かせました。そして三人でわずかなお小遣いを合わせて、黒い靴下を贈りました。
母が焼いたケーキの甘い匂いが部屋いっぱいに広がり、父の大好物の赤飯も並びました。部屋の明かりを消して歌った「ハッピーバースデー」。ロウソクの火を見つめ、手をたたいたあの楽しさは、今も鮮やかに心に残っています。

そして今年もまた、その時が訪れようとしています。誕生日の食卓には、父のための赤飯粥が並びます。かつてのようなごちそうではありませんが、家族みんなで分かち合えることが、今は何よりの祝福です。ここまで守られて、誕生日を迎えることができることを、心からありがたく思います。