目を閉じて感じる夏─自然音と緑で届ける涼やかな癒し
父は寝たきりで、母は目が見えません。それでも、少しでも季節を感じ、心やすらぐ時間を過ごしてほしくて──部屋のなかに、小さな工夫をいくつか取り入れています。
テレビの横には、姉が贈ってくれたポトスを置いています。そのグリーンのあいだから、ダイソーで買った朝顔の造花の花だけをそっと差し込んで。まるで朝顔が咲いているように見えて、とても自然です。

その隣には、200円の本物の風鈴を飾っています。風が当たると、ちりん…とやさしい音色が響き、
父の視界の中に、小さな“夏の庭”が広がります。窓辺と壁には、金魚や風鈴のステッカーを貼って、
視覚的にも涼しげな雰囲気に。

テレビ画面には新緑や清流の映像を映し出し、YouTubeプレミアムで流れる川のせせらぎや鳥のさえずりが、まるで自然の中にいるような心地よさを運んでくれます。

母は目が見えなくても、こうした自然音に深く癒されていて、目を閉じて、静かに耳を澄ましています。そして父は、映像を眺めながら「旅行に行ったみたいだなあ」と嬉しそうに微笑んでくれました。そのひと言が、何よりの励ましになっています。
朝と夜には、賛美歌や聖書の朗読をそっと流しています。父と母が一緒に口ずさんだり、神さまのことばに耳を傾けたりするひとときは、たましいが潤される、かけがえのない時間です。静かな祈りの中に、神さまの平安がそっと宿っているように感じます。

音、緑、季節の彩り、そして祈り。介護の中で、小さな工夫を重ねることで、部屋は“いのちを感じる空間”へと変わっていきます。たとえ見えなくても、身体が思うように動かなくても──季節や自然、神さまの愛を、深く感じ取る力は心に宿っているのだと、父と母が教えてくれています。
今日も「そばにいるね」。やわらかな夏の空気とともに、そっと寄り添いながら。