秋の柔らかな陽ざしが、窓辺に差し込む季節になりました。
訪問歯科の先生が、母の新しい義歯を作ってくださいました。ところが、できあがるまでのわずか3週間に手のしびれが進み、それまで自分でできていた義歯の入れ外しが、まったくできなくなっていました。
季節がゆっくりと移り変わる一方で、母の身体には、それよりも少し早い時間が流れているように感じます。
日々の暮らしにも、私の手が必要な場面が増えています。お手洗いもその一つです。
母がお手洗いへ行くときには、私が付き添っています。けれど、夜中、私が眠っていると、母は呼び出しブザーを押すことも遠慮して、一人で向かうことがあります。
時間をかけて、ゆっくり、ゆっくり。
そんな母に、もう遠慮しなくてもよい夜を過ごしてほしい。
そう願う一方で、母のそばで眠ることには、私なりの覚悟が必要でした。
一日の終わりに過ごす、私だけの空間、私だけの時間。
母のそばにベッドを置くということは、母が父に最期まで寄り添ったように、今度は私が母を看取るその日まで、同じ部屋で暮らしていくということです。
そして、半年前まで父のベッドがあった窓辺に、今度は私のベッドを置くことに決めました。

そんな私の決心を、弟夫婦が、ベッドの組み立てという形で支えてくれました。
ベッドが届くと、ほどなく弟と弟のお嫁さんが組み立てに来てくれました。
商品紹介には「工具不要、組み立て3分」。検証動画では、なんと2分44秒で完成!
……とはいえ、わが家では二人で木枠を支え、部品を確かめながらの共同作業です。
二人が息を合わせ、黙々と組み立ててくれる姿を見ていると、心が温かくなりました。弟夫婦が、私たち母娘の新しい暮らしのために力を貸してくれました。
こうして出来上がった、木の香りがするベッド。翌朝にはマットレスも届きました。

母のそばに、もうひとつのベッド。
これからは母が安心して夜を過ごせそうです。
このベッドをきっかけに、以前から家族に話していた、ある願いも形になり始めました。
両親がまだ元気で、弟夫婦の家族と一緒に暮らしていた頃、私は弟や弟のお嫁さん、神戸にいる姉に、こんなことを話していました。
「お父さんとお母さんの『プロジェクトHeaven』って、どう?」
どこかのテレビ番組を思わせる、ちょっと壮大な名前です(笑)。
周囲の反応はいまひとつでしたが、私はこの名前がすっかり気に入り、その後も折にふれて口にしていました。
その頃は、具体的な計画があったわけではありません。ただ、両親に人生の最後まで、たくさんの幸せを感じながら過ごしてほしい。そんな願いがありました。
父は亡くなる前、大きな声で「あ〜、幸せだ〜」と言いました。
今も心に残る、父の言葉です。
母にも、そんなふうに幸せを感じながら、日々を過ごしてほしい。
食事をしながら、私はよく尋ねます。
「お母さん、お母さんが幸せだ〜と思うときはどんなとき?」
母は「そうね〜」と言って、微笑んでいます。
母がこれまで歩んできた人生、積み重ねてきた祈りと愛。その豊かな人生の集大成を、喜びと幸せに満ちた日々にしていきたい。
それが、私たち家族の「プロジェクトHeaven(ヘブン=天国)」です。
もちろん、世界を変える大事業ではありません。
弟夫婦、神戸にいる姉夫婦、そして私。
それぞれにできることを持ち寄り、母と一緒に笑い、喜び合う。そんな日々を重ねていけたらと思います。
母の今日を、幸せな一日に。
さあ、ワンチーム!
いよいよ「プロジェクトHeaven」始動!
応援歌:KAN『愛は勝つ』
